【田舎に移住を検討中の方へ】高齢になっても住みやすい家を決めるポイント

この記事は、田舎への移住を考え、家を探している方に向けた内容となっています。

年をとっても住みやすい家とはどんな家が理想的かを理学療法士の観点で検討してみようと思います。

はじめに

脱サラ、起業、農業への転職などで田舎への移住生活を考えている方も多いのではないでしょうか。もちろん、住みたい場所へ行くだけでは生活はできません。住む場所が必要となってきます。すでに賃貸や購入したい古民家を見つけているかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください。人間は年を取りいつかは病気やケガをしてしまい、せっかく見つけたお気に入りの家に住めなくなる事もあります

ここでは、理学療法士としての観点から10年25年後も生活しやすい家について考えてみようと思います。

いつまでも健康でいられるわけではない

家を購入した時点では年齢が若くても徐々に年をとっていきます。

2016年の厚生労働省のデータでは平均寿命が男性80.9歳、女性87.1歳となっており、健康寿命は男性72.1歳、女性74.7歳となっています。健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限することなく生活できる期間と定義されていますので、会社員の定年を65歳とすると約6~10年後には、何らかの日常生活の制限が発生すると考えられます

もちろん、介護保険制度でサービスを受けながら幸せに生活をする事ができるとは思いますが、健康な時と同じ日常生活を送れるわけではありません。

【参考・参照】厚生労働省. 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/index.html, (参照 2022-7-31)

どういう病気になると在宅生活が難しくなるか?(介護が必要になってくるのか)

どういう病気になると在宅生活が難しくなるか?を考えてみましょう。在宅生活が難しくなる事を何らかの介護やサービスを利用する事とここでは考えてみます。

厚生労働省の2019年 国民生活基礎調査の概要によると、介護が必要となった主な原因としては第1位が認知症、第2位が脳血管疾患(脳卒中)、第3位が高齢による衰弱となっています。
また、上位三位には入っていませんが、関節疾患や骨折・転倒も在宅生活を不自由なく暮らすことを阻害する恐れがあります。

ここでは、脳血管疾患、関節疾患、骨折・転倒を中心に考えてみることにします。

【参考・参照:厚生労働省. 2019年 国民生活基礎調査の概要. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html, (参照 2022-07-25)】

高齢になっても住みやすい住居のポイント

家までの車道がある(家に車でたどり着ける)

家まで車で行けることが重要です。

都会に住んでいると気づきにくいですが、田舎では家から車道までの距離が長い事があります。道路から田んぼのあぜ道程度の小道や車が通れないような急な斜面を通って我が家に到着することもあります。このような場合、歩けなくなったときに移動手段はどうしよう??ということになります。車いすを利用するという方法もありますが、車いすが通れないほどの狭い道である事もあります。その場合は、家に入ることができなくなってしまう恐れがあります。せめて道路から車いすを使って家まで移動できる幅の道があるかを確認しましょう。家の入口(玄関など)まで車が入れる道がある事が理想的です

また、道幅が狭いと救急車や消防車も家に近くまで来られないので、何かあったときに大変困ります

庭の凹凸が少ない

庭つきの家を購入したい方もいるでしょう。その際には、家の玄関まで凹凸の少ない道が庭にある方がよいでしょう。

美しい庭は見ていて気持ちがいいですが、庭が砂利で埋め尽くされていたり、飛び石がある場合は、注意が必要です。

年齢と共に筋力は低下し、バランスも不良になっていくので、砂利などの不整地ではバランスを崩して転倒してしまう恐れがあります。また、庭の飛び石に引っ掛かったりする事もあります。

不揃いなタイルを敷き詰めて道にしている場合も注意が必要です。タイルとタイルのわずかな段差に足先が引っ掛かり転倒する恐れがあります。

車椅子での生活となった時、庭に砂利を敷いていると、車椅子の車輪が砂利に沈んでしまい進めなくなってしまいます(特にキャスター(前輪))。

理想は、平坦で凹凸がない道が玄関まで続いている方がよいと思います。引っ掛かって転んでしまう事が防げると思います。

持ち家がいい

借家も理想的ではありますが、気にしておかなければいけない点があります。それは、足の力が弱くなったり、バランスが悪くなったりして、壁や柱を持たなければ歩くのが難しくなってきた時です。その時は手すりがあれば、恐らく安全に歩くことができるでしょう。
幸いにも介護保険の住宅改修制度を利用すれば手すりの取り付け時に補助が受けられます。

持ち家であれば自分の好きなように手すりを取り付ける(打ちつける)事ができますが、借家の場合は、大家の許可がなければ手すりを付けることができない事があります。もちろん、大家が許可すれば問題なく、取り付けることができます。

このような理由で借家より持ち家の方がよいと思います。

余談ですが、最近は介護保険で据え置き型の手すりがレンタルできるので、借家でも手すりを取り付けなくても良いようになってきています。

平屋がいい

2F建ての家よりも平屋の方がよいと思います。

2F建てもよいかもしれませんが、変形性膝関節症でひざ痛が生じてくると、階段昇降でひざ痛が生じ、徐々に2Fに上がらなくなってきます。四つ這い移動やお尻で上がる人もいますが、2Fは物置になっている場合も多いです。

また、高齢や病気になると階段昇降が大変になってくる事があり、一階で生活することが多くなってきます

このため、2F建てでもよいですが、1Fで快適に暮らせるかどうか?(あるいは平屋)を重視すると良い家が見つかる気がします。

トイレ・風呂は家の中にある方がよい

田舎の家では時にトイレや風呂が屋外にある場合があります。
屋外で農作業した後に汚れた長靴を履いたままトイレに入れるようになっていて便利に作られています。

しかし、家でくつろいでいても屋外にトイレに出かけていかなくてはならないので、夜間のトイレで屋外を歩かなければいけない場合があります。夜歩くと足元に注意しなければ、転倒リスクがあります。

家の中にトイレがあるかどうかをチェックしておくと良いでしょう。また、時に風呂も屋外にある場合があるので合わせてチェックしておくと良いと思います。

トイレと寝室の距離は短い方がよい

歩くことが難しくなってきたときには、寝室とトイレの距離は短い方が良いです。特に夜間に起きて、トイレに移動する際には、寝ぼけていることもあると思うので、移動距離を最短にした方が転倒する確率が低くなります。

また、脳卒中後の片麻痺で歩く速度が遅い場合装具を装着して歩く必要がある場合は、距離が長すぎるとトイレが間に合わない恐れがあります

もちろん、寝室の位置をトイレの近くに変える事やポータブルトイレを利用するなどして対応することも可能です。

自家用車を置ける広さの庭があると良い

快適な田舎生活を送るうえで自家用車はあった方が良いです。それは以下の場合があるからです。

・近所までの距離が遠く、いざというときに近隣の住民に助けを求めることができない。
・近くにスーパーがないので、遠方に出向かなければならない。最近は移動スーパーがあるので、問題ない場合もあります。
・バスや電車などの公共交通機関の本数が少ない場合がある。

これらの理由から、自家用車を置ける庭があるのが理想的です。

親族の家の近くの方が良い

若いときには、将来入院するとは考えないとは思います。しかし、年齢と共にいつかは入院することもあるでしょう。しかも突然入院となった場合に、親族が近くにいなければ、必要な物品(靴、着替えの服、お金など)を持ってきてくれる人がいないので、困ってしまうことがあります。また、重病で在宅復帰を考えるときに親族が近くにいれば心強いと思います。

このため、親族の近くに家があると理想的だと思います(もちろん、仲が良い事が必要ですが・・・)。

お得な住宅改修制度

介護保険制度の住宅改修

対象者

対象者は介護保険の認定を受けている65歳以上の方です。また、40~64歳までの医療保険加入者で末期がんや関節リウマチなどの老化による病気が原因で介護認定を受けている場合は利用できます。

【参考・参照:厚生労働省老健局. 介護保険制度の概要. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000876008.pdf, (参照 2022-08-13)】

対象となる住宅改修

介護保険制度での住宅改修は、何でも支給がされるわけではありません。以下の内容であれば住宅改修費が支給されます

・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑りの防止及び移動の円滑化などのための床又は通路面の材料の変更
・引き戸などへの扉の取り換え
・洋式便器等への便器の取り換え
・その他前各号の住宅改修に付帯して必須となる住宅改修

*詳しくは下記を参照してください。
【参考・参照:厚生労働省. 介護保険制度における住宅改修. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000876008.pdf, (参照 2022-08-09)】

補助額

住宅改修費の9割相当額が償還払いで支給されます。支給限度額は20万円の9割が上限となっています。

利用前の注意点

基本的に住宅改修の工事前に申請書を提出する必要があります。工事完成後に必要書類を提出する事で補助を受けられるので注意が必要です。

住宅改修の流れの詳細は下記を参照ください
【参考・参照:厚生労働省. 介護保険制度における住宅改修. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000876008.pdf, (参照 2022-08-09)】

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